「はーい。今日の宿題は作文でーす」
日本の中のきっとどこかの都道府県にあるばずの「丸橋小学校」
今、その学校の一年二組の担任に当たる小崎先生が妙なテンションで子供たちに宿題を出しました。
ちなみにこの小崎先生。まだ教師歴は二年なので子供たちのことをよく分かっていません。なので、一年生にも平気で作文の宿題を出します。
「せんせい! さくぶんってなにー?」
敦君が先生に聞きました。
「分からない人は、おうちの人に聞いてくださいねー」
クラスの皆は一人も漏れなく家の人に聞こう。と思いながら家に帰りました。
家に着いた敦君は早速、かばんの中から先生にもらった原稿用紙を取り出すと、それと鉛筆を持って台所に居るお母さんの元へ行きました。
「おかあさーん。さくぶんってなにー?」
敦君は聞きましたが、お母さんは夕飯を作っている最中で手を離せなかったので
「後でね」
といいました。
敦君は「あとでね」とお母さんに言われたとおりに原稿用紙に書きました。
次にお父さんに聞きました。
「ねえ、ねえ。おとうさん。さくぶんってしってる?」
するとお父さんはクラブを磨きながら
「あったりめーじゃん」
敦君は「あったりめーじゃん」と書きました。
次にお兄ちゃんに尋ねました。
「さくぶんってなに?」
でも、お兄ちゃんは友達に電話をしていたので
「三時頃、バイクで行くゼ!」
といいました。
敦君は「さんじごろ、ばいくでいくぜ!」と書きました。
次におじいちゃんのところに行きました。
「おじーちゃん。さくぶんおしえてー」
けれど、おじいちゃんは少し呆けていて、自分の世界に入っていたので、大好きなお菓子のCMの歌を歌っていました。
「やめられない、止まらない。かっぱえ○せん」
敦君は「やめられない、とまらない。かっ○えびせん」と書きました。
最後に弟の隆に聞きました。
「たかしー。さくぶんってしってるかー?」
隆はアン○ンマンのテレビを見ていたので。
「あー○ぱーんまーん」
と言いました。
敦君は「アーンパーン○ーン」と書きました。
「よし! おうちのひとぜんいんにきいたから、さくぶんはばっちりだ!」
敦君は自信満々にうれしそうに原稿用紙を鉛筆をかばんと筆箱にしまいました。
次の日。
「作文は書いてきましたかー?」
「「「はーい」」」
小崎先生の問いに子供たちの声が重なります。
「発表してくれる人ー」
「「「はーい」」」
子供たちが手を挙げて返事をします。
「じゃあ、敦君。作文を発表してください」
敦君は立ち上がるとこう言いました。
「あとでね」
先生の顔が見る見る赤くなっていきます。
「先生をからかっているのですか!」
「あったりめーじゃん」
敦君は表情を変えずに言います。
「あとで職員室に来なさい!」
からかうことになれていない先生は言葉を荒げて言いました。
「さんじごろ、ばいくでいくぜ!」
先生はその敦君の言動に困惑気味です。
「あなたはいったい、何が言いたいのですか?」
「やめられない、とまらない。かっぱえび○ん」
一方敦君の目線は、原稿用紙を向いたままです。
「先生の顔を見なさい!」
「○ーンパーンマーン」
先生の堪忍袋の緒が切れました。
「廊下で立ってなさい!」
敦君は先生の言葉に素直に従って廊下に出ましたが、
「どうしておこられたんだろう?」
と、先生が敦君の原稿用紙を見て誤解を解くまで首を傾げていました。
06/07/16 書き忘れ付け足し
06/07/15